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ビッグトレンド

安延 申 前川 徹 編・著 田中 辰雄

本体価格: 2200円+税


判型:A5 /上製
ページ数:248
初版年月日:2009/06/04
ISBN:978-4-7572-1679-2
ASIN:4-7572-1679-3

IT技術の進化の歴史に加えて、Saas、クラウドコンピューティングといった最新の話題までを技術、ビジネスの視点から解説。ビジネスマンから学生まで、ITを知りたい人、必読の1冊。

目次

Table of contents

■はじめに

■序章 ITは何を変えてきたのか
 いくつかの記憶と「主役」の交代
 技術革新とIT地図の変化
 ITの勢力図を変化させるもの

■第一章 計算機の時代からパソコンの時代へ
 はじめに
 コンピュータの商用利用のはじまり
 メインフレーム時代の覇者IBM
 大型コンピュータの利用の拡がり
 オンライン・システム
 EDI
 SIS
 POSと店舗システム
 ダウンサイジングとオープンシステム化
 マイクロソフトの原点
 MS-DOS
 マイクロソフトのビジネス成功の背景
 ウィンドウズへの道

■第二章 オープン化、インターネットの登場と発展
 ダウンサイジングとオープン化(モジュール化)の進展
 ソフトウェア産業の独立と成長
 ERP
 BI
 インターネットの登場と発展
 WWWとウェブブラウザ
 検索ビジネスとインターネットポータル
 電子商取引(e−コマース)
 SCM
 SNS、ウィキ
 オープンソース・ソフトウェア
 まとめ

■第三章 情報化の長期トレンド 〜モジュール化の終焉と統合への回帰〜
 はじめに
 問題意識「モジュール化」対「統合化」
 モジュール化とは何か
 モジュール型圧勝の歴史
 モジュール化の原因
 技術革新のサイクル論とモジュール化の終焉
 統合型製品復活の実例
 技術革新サイクル論に関する証拠
 統合へのアプローチ
 統合型パソコン
 まとめ

■第四章 SaaSとソフトウェア・ビジネスの未来
 SaaSとは何か
 統合化とSaaS
 SaaSの市場規模
 SaaSの事例
 ユーザーからみたSaaSのメリット
 ユーザーからみたSaaSのデメリット
 ベンダーからみたメリットとデメリット
 セキュリティはSaaS普及の阻害要因なのか
 高信頼性ネットワーク
 SaaSの適用領域
 ソフトウェアのコモディティ化
 ソフトウェアにおけるオーバーシューティング
 SaaSはソフトウェア・ビジネスの救世主に
 SaaSの本質
 規模の経済とSaaS
 マーケティングに全力をつぎ込むSaaS企業
 SaaSとロングテール市場
 まとめ

■第五章 ITの未来を探る 〜クラウド・コンピューティング〜
 はじめに
 クラウド・コンピューティング
 ユーティリティ・コンピューティング
 マルチ・テナント方式
 主要企業の動向
 XaaSの世界
 クラウド・コンピューティングの効用
 クラウド・コンピューティングの経済性
 仮想化技術
 クラウド・コンピューティングの懸念と課題
 越境するデータの問題
 イントラ・クラウド/プライベート・クラウド
 コンテナ型データセンター
 第四の波
 「集中vs.分散」「接続 vs.分断」

■終章 ITはどこへ向かうのか
 ITの今
 ITの新しい可能性

■おわりに

その他情報

Other Information

【著者プロフィール】

 安延 申(やすのべ しん)フューチャーアーキテクト株式会社代表取締役社長

 1956年岡山県生まれ。東京大学経済学部卒。78年通商産業省入省(現経済産業省)。95年APEC推進室長として大阪APEC会議に参画、機械情報産業局情報処理振興課長、同局電子政策課長を歴任。2000年沖縄サミットでのIT宣言やIT戦略会議の創設など日本のIT政策に大きく関わる。退職後は米国スタンフォード大学日本センター研究所長を経て、03年にウッドランド株式会社社長。07年よりフューチャーアーキテクト株式会社社長。

 前川 徹(まえがわ とおる)サイバー大学IT総合学部教授

 1955年三重県生まれ。名古屋工業大学情報工学科卒。78年通商産業省(現経済産業省)入省。機械情報産業局情報政策企画室長、日本貿易振興会ニューヨークセンター産業用電子機器部長、情報処理振興事業協会(IPA)セキュリティセンター所長(兼技術センター所長)などを経て、現在はサイバー大学IT総合学部教授。社団法人コンピュータソフトウェア協会専務理事を兼任する。著書に『ソフトウェア最前線』(アスペクト)など。

 田中辰雄(たなか たつお)慶應義塾大学経済学部准教授

 1957年東京都生まれ。88年東京大学大学院経済学研究科修了。国際大学グローバルコミュニケーションセンター研究員、米コロンビア大学客員研究員を経て、98年より慶應義塾大学経済学部。専門は計量経済学、情報通信産業の分析。現在は「ネットワーク外部性の実証と政策的合意」「コンテンツ産業の経済分析」について研究を続けている。著書に『ブロードバンド市場の経済分析』(慶應義塾大学出版会)など。

本書「はじめに」より

 本書は、あるフォーラムの成果を取りまとめようという企画が始まりだった。そのフォーラムは、「フューチャー イノベーション フォーラム」と言う。ウシオ電機の牛尾治朗会長、フューチャーアーキテクトの金丸恭文CEOが音頭を取り、「ITとイノベーションの成果を社会に広め、経済や社会が発展する原動力としたい」という目的で、2006年に創設された非営利の任意団体である。

 今日の社会の中で、ITの評判は必ずしも良くない。ネットバブルの最中に次々と登場した「IT長者」が様々なスキャンダルに巻き込まれたり、また、IT企業がM&A合戦に華々しく登場してメディアを賑わせたりしたため、「IT」というと、何か浮ついたイメージで見られがちだ。実際、ベテランの経営者の中には、依然として「IT=虚業、製造業や流通業=実業」といった見方をする方も少なくないし、ITブームのアンチテーゼとして「日本経済の製造業回帰」が喧伝されたこともあった。

 こうした雰囲気の中、この企画は、ITの歴史と価値を客観的に再評価しようではないかということで始まった。具体的には、「ITの昨日、今日、明日」というテーマでシリーズのワークショップを開催し、この分野の論客に自由に放談してもらい、フォーラムの会員たちと討議してもらってはどうか……ということになった。そして、このワークショップの幹事役になったのが、本書の共編著者である、前川と安延である。
 実は、前川と安延は旧通産省(現経済産業省)の元同僚である。そして、偶然ではあるが、前川は通産省でシステム管理を担当する部門に、安延は調査と統計を担当する部門に最初に配属された。当時はまだパソコンが普及する以前であり、コンピュータと言えば大型コンピュータの時代で、職場でその操作を経験するような人は、ごく少数だった。ところが、両名は、数多くいる同僚の中で一番早くコンピュータに触れ、仕事に使う機会を持てたのである。そして、その二人がともに入省二〇年後、いわゆるIT革命の最中に、再度ITに関わる行政を担当することになった。結果として、二人とも「ITの熱にうかされて」通産省を途中で辞職し、IT業界に飛び込んでしまったという妙な共通点を持つことになるのだが、これは二人が社会人として最初に触れた頃のコンピュータと、インターネットの時代に触れたITの間にある「驚異的な進化」を実感し、その進歩の速さと可能性の大きさを痛感したことも一因かもしれない。

 こういう旧知の二人であるため、企画は割合とスムーズに進んだ。そしてこのワークショップには、日本経済新聞の関口和一氏、マイクロソフトの楠正憲氏など、そうそうたる論客に登場いただき、お話しいただいた。実は著者として加わることになる田中も、当時は「慶應義塾大学 田中辰雄准教授」として、講師として参加した一員だった。このワークショップは中身の濃いものになり、参加者が皆大いに触発されて、この場での議論を書物にしてはどうだろうかという話になったというのが、事の発端である。
 ただ、いざ原稿を書く段階になって、前川も安延もやや困惑をした。それは、講師の皆さんのお話があまりに広汎にわたり、とてもではないが簡単にまとめることなどできそうにない……ということに気づいたためだ。
 そこで、結局、講師の皆様から頂いた「気づき」を活かし、また経済学者として、ITの今と将来についての研究を行っている田中も巻き込んで、全体を「ビッグトレンド−ITはどこへ向かうのか(仮)」として再構成できないかということになった。
 ちなみに、田中と前川、安延の最初の接点も結構古い。前川はとある総務省の研究会で、また安延は、東京大学が主催した研究会で最初に出会っている。しかも、この三名は期せずしてコンピュータソフトウェア協会の役員を務める間柄でもある。そういう意味では、この書籍をまとめるにあたって、この三人が集まったのも何かの縁だったのかもしれない。

 本書はこうした経緯で出来上がったが、いわゆる「IT」全体を取り上げるのは、その範囲があまりに広すぎて、焦点がぼやける可能性が大きいため断念した。本書で取り扱っているのは、主としてコンピューティングとソフトウェアに関する技術やビジネス、そして、これらから構成される経済・社会のシステム・ビジネスという「狭義のIT」であって、通信や放送、ゲームなどのデジタルコンテンツについては取り上げていない。もちろんインターネットやブロードバンド、無線といったネットワークの進化、あるいは、そこで扱われるコンテンツはITの世界の重要な要素である。しかし、最終的にそれをビジネス利用に活用していくためには、「それを世の中のニーズにあった製品・サービスとしてどうシステム化し、提供していくか」にスポットを絞っていきたいという認識による。ただ最終章では、新しい形のITの進化と可能性について若干触れている。
 全体は序章と終章を含む七章から構成されている。序章では本書の「視点」を簡単に提示し、第一章、第二章では、今日までのITの進化を簡単に振り返っている。第一章では大型コンピュータの時代、第二章ではオープンシステムとインターネットの時代について、新技術の登場と市場競争の変化、ビジネスの成功者と成功の理由といった視点から吟味を行っている。
 第三章から第五章までは、「新しいトレンドと新しいビジネス」について、いくつかの注目されるトピックを取り上げて論じている。第三章は、技術革新の長期トレンドからIT産業の産業構造・産業組織の変化にスポットを当てている。第四章と第五章は、SaaS、クラウド・コンピューティングという、今、最先端の技術とビジネスにスポットを当て、その将来を検証している。終章では、今日までの歩みを踏まえて、ITビジネスの明日について、多少広めの視点から展望している。第一章、第二章は前川と安延が二人で執筆しているが、第一章は主として前川が、第二章は主として安延が執筆した。さらに第四章、第五章は前川が執筆し、序章、終章は安延が、第三章は田中が執筆した。

 最後に改めて触れることにしたいが、本書は、フューチャー イノベーション フォーラムのワークショップでお話しいただいた、前述の講師の皆様だけでなく、多くの人のご協力と叱咤激励の産物として日の目をみることができた。本書が「ITの熱」に惹かれ、「ITビジネス」に関心を抱く方々のお目に触れ、お役に立てば幸いである。


編著者 安延申、前川徹
著者 田中辰雄