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BORO(ボロ)

小出 由紀子 編集 都築 響一 編集・撮影 田中 忠三郎 120・121P撮影

本体価格: 3400円+税


判型:B5変
ページ数:128
初版年月日:2009/01/07
ISBN:978-4-7572-1596-2
ASIN:4-7572-1596-7

 そんなに昔のことじゃない、たった数十年前まで、貧しい農村といえば、人はまず東北をイメージした。本州のどん詰まり、東北の端っこの青森県で極貧の生活にあえいできた農民が生み出した、恐るべきテキスタイルの美学、それが”ぼろ”である。

 民芸に詳しい人ならば、青森というと津軽のこぎん刺しや、南部の菱刺しを思い浮かべるだろう。雪国の女性たちによって伝えられてきたこぎんや菱刺しは、昭和初期の民芸運動に発見されて、一躍脚光を浴びるようになったが、もっともっと肌に近いところで農民の日常のなかに生きてきた“ぼろ”は、いまだに顧みられることもなく、「貧しい東北を象徴するもの」として、恥ずかしさとともに葬り去られようとしている。リサイクルという言葉すら白々しく思えるほどの、布への愛着とともに生きてきた人々の存在がきれいさっぱり忘れ去られようとしている。青森県内に数多い美術館・博物館で、こぎんや菱刺しを観賞することはできても、ぼろは1枚も見ることができないのだ。

 寒冷地である青森では綿花の栽培ができず、農漁民の日常衣料は麻を栽培して織った麻布だった。また藩政時代を通じて農民が木綿を着用することは禁じられていた。したがって田畑での作業着から、赤ん坊のおしめ、長い冬の夜を過ごす布団まで、農民の身につけるものはすべて、麻布で縫い上げられた時代が長く続いたのである。

 1枚の麻布で寒すぎれば、何枚でも重ねていく。枚数を重ねれば防寒性が増すし、糸を刺していけば丈夫になる。傷んで穴が空けば小布でつくろい、また布と布のあいだに麻屑を入れて温かくする。そうした厳しい生活環境から生まれたサバイバルのかたち、それがこぎんであり菱刺しであり、ぼろなのだ。

 本書に紹介するのは東北地方でほとんどただひとり、昭和40年代から青森県内の山・農・漁村を歩き回り、”ぼろ”とひとまとめに呼ばれる、布と人との愛のあかしを探し求め、保存してきた田中忠三郎さんのコレクションである。

 そっくり復刻して、フランス語かイタリア語のタグと高い値段をつければ、そのままハイファッションになるにちがいない、完璧な完成度。それが民芸や現代のキルト、パッチワーク作家のように、きれいなものを作りたくて作ったのではなくて、そのときあるものをなんでもいいから重ねていって、少しでも温かく、丈夫にしたいという切実な欲求だけから生まれた、その純度。

 優れたアウトサイダー・アートが職業現代美術作家に与えるショックのように、雪国の貧農が生んだ”ぼろ”の思いがけない美の世界は、ファッション・デザインに関わるすべての人間に根源的な問いを突きつけ、目を背けることを許さない。

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【著者プロフィール】

小出由紀子(こいでゆきこ)

東京生まれ。早稲田大学卒業。(株)資生堂勤務を経て独立。展覧会の企画や書籍の編集・翻訳を手がける。展覧会に「ビル・トレイラー」展(1992年ザ・ギンザ・アートスペース、1993年アール・ブリュット・コレクション)、「アール・ブリュット 生の芸術」展(1997年京都文化博物館)、「Passion and Action」(2005年ハウス オブ シセイドウ)、「アフリカン・アメリカン・キルト−記憶と希望をつなぐ女性たち」展(2007年資生堂ギャラリー)など。著書に『パッション・アンド・アクション』(求龍堂)、訳書に『ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で』(作品社)、都築響一との共編書に『Henry Darger's Room 851 Webster』(インペリアルプレス)がある。

都築響一(つづききょういち)

編集者。1956年東京都出身。上智大学卒。学生時代から雑誌『ポパイ』『ブルータス』誌で活躍。89年から92年にかけ、全102巻の現代美術全集『アート・ランダム』(京都書院)を刊行。以来現代美術、建築、写真、デザインの分野での編集・執筆活動を続けている。主な著作に『TOKYO STYLE』(京都書院・ちくま文庫)、『賃貸宇宙』『珍世界紀行ヨーロッパ編』(以上筑摩書房)、第23回木村伊兵衛賞を受賞した『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』、『STREET DESIGN FILE全20巻』『精子宮 鳥羽国際秘宝館・SF未来館のすべて』『バブルの肖像』『性豪 安田老人回想録』(以上アスペクト)など。

【テレビ出演】『BORO(ボロ)つぎ、はぎ、いかす。青森のぼろ布文化』の監修者、田中忠三郎さんがNHK教育「鑑賞マニュアル 美の壺」2月26日(金)夜22時〜放送に出演されます。

・番組ホームページ http://www.nhk.or.jp/tsubo/

 ・2月26日(金)22時00分〜

 ・再放送 28日(日)深夜24時15分〜 

 ・NHKBS2(再放送)3月2日(火)16時〜

 ・BS-Hi (再放送)3月5日(金)午前7時〜

 ・NHK総合(再放送)3月6日(土)午前5時15分〜

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【イベント情報】2009年3月1日(日)〜3月16日(月)丸善・日本橋店(東京)3階特設会場にて『丸善・日本橋店開店2周年記念 BORO展(つぎ、はぎ、いかす。青森のぼろ布文化)』が開催されました。

青森の寒さと貧しさの中から生まれた奇跡のテキスタイル・アート“ぼろ”。
田中忠三郎コレクションより約50点の“ぼろ”を収録したバイリンガル版。
本物のエコロジーはこんなにも美しい。

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