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マティスを追いかけて

ジェームス・ モーガン山岡 万里子

本体価格: 2800円+税


判型:A5 /上製
ページ数:456
初版年月日:2006/06/05
ISBN:4-7572-1249-6
ASIN:4757212496

 初老に差し掛かった男が仕事を辞め、セレブな生活を捨て、家を売り、妻とともに画家マティスの足跡をたどる1年間の旅に出たノンフィクション。本書は著者ジェームズ・モーガンの半生の回想録であり、フランス各地をめぐる旅行記であり、かつマティスの伝記でもある。そしてわれわれに人生の再発見や芸術の重要性について、静かに教えてくれる。

 まもなく『団塊の世代』と呼ばれる年代層が会社で定年を迎えはじめます。週刊誌などでも「熟年夫婦のライフスタイル」についての特集がひんぱんに組まれるようになってきました。アメリカでも同様、著者ジェームズ・モーガン自身もベビーブーマーです。

 高度成長期を担い、豊かで便利な生活を追求し、仕事にそして右肩上がりの収入の向上に邁進してきた彼らが企業人としての役割を終えかかり、人生とは何か、ほんとうの生きがいとは何か、について考えはじめたいま、ぜひじっくりと味わってほしい1冊です。作家・伊集院静氏は『週刊大衆』(5/1号)の連載ですでに本書を紹介してくれました。「興味深い本だった。ぜひおすすめしたい」と。

目次

Table of contents

プロローグ ゆがみのない目で

第一部 ▼鉛【なまり】色の空

 第一章 ▼木炭画【チャコール】の似合う土地—ピカルディ
 第二章 光をもとめて—パリ
 第三章 ▼遠近法【パースペクティヴ】の問題—パリ
 第四章 楽園の一歩手前—パリ
 第五章 断崖に立つ—▼ベル島、オーレ

第二部 借りものの光

 第六章 ものごとの本質—コルシカ島
 第七章 美しきジャングル—コリウール
 第八章 平衡—カマルグ、カシ
 第九章 隠された目—モロッコ

第三部 この絶え間なき眩惑

 第十章 正確さは真実ではない—ニース
 第十一章 家々に住まう沈黙—ニース、ヴァンス
 第十二章 世界を、あるがままの姿ではなく—コリウール周辺

挿画についての解説
参考文献について
謝辞
著者プロフィール
訳者あとがき

その他情報

Other Information

伊集院静さん(作家)より読後の感想をいただきました。ご紹介します。

・もしあなたが人生のなかばを過ぎて何か新しい生活をしたいと思うなら、この本をとりなさい。勇気と希望がここにある。その上、光と色彩のマティスと旅もできる。

・マティスに魅せられ、五十歳を過ぎた夫婦が、画家の人生を見る旅に出た。美しい街々は、色彩と光と出逢う日々だった。この書には人生の宝物がある。

 この本はとても〈贅沢な〉本です。「味わいながら読みたくなる、贅沢な本にしよう」と当初より考えておりました。「読まなくても内容がわかる」本が世にあふれ、しかもそのほうがたくさん売れちゃうという近年の状況をかねがねからくやしく(ちょっぴり羨ましく)思っておりましたものですから。

 まず原書にないマティスの代表作5点を、カバーや扉に掲載しようと考えました。米国版の版元に許諾を求めると「うちは大変だったからやんなかったけど、そちらでやりたければどうぞどうぞ」とアメリカ人らしくクールに対応してくれました。

 そうなのです。マティス財団の審査は大変厳しく、特に「マティス・ブルー」の青色がきちんと出てないと掲載の許可がおりないという噂は聞いていました。実際、デザインをメールで送ること5回、その後印刷した色校正をフランスまで送ること3回。最後に、第1章扉「カスバの門」のOKが出たのは、マティス財団への申請開始より数えて3カ月後のことでした。

 ほぼ同時期に、ゲラをお送りして帯の推薦文のお願いをしていた作家の伊集院静先生からFAXで原稿が届きました。手書きで「この書には人生の宝物がある」と書かれた文字が目に入ってきたとき思いました。感無量とはこのことかと。

 かつてセレブな生活を満喫し、それをすべて捨てて旅に出た著者が画家マティスの目を通じてわれわれに教えてくれるものは、明日すぐ役立つ「お金持ちになる方法」でも「モテる方法」でもありません。それは齢を重ねるごとにじわじわと思い当たるかもしれない「人生の味わい方」のヒントなのです。

 読者の方々がご自身の人生と重ね合わせ、ゆっくりと味わって読んでいただければ、編集担当者としてこれに勝る喜びはありません。(宮崎洋一)