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日本の「地下世界」の集大成!

JAPAN UNDERGROUND III

内山 英明

本体価格: 5500円+税


判型:B4変形 /上製
ページ数:168
初版年月日:2005/12/09
ISBN:4-7572-1198-8
ASIN:4757211988

【快挙!第25回土門拳賞&2006年日本写真協会賞 年度賞同時受賞!】写真家内山英明氏が受賞しました。おめでとうございます。

 「地下ブーム」の火付け役となり、各界に熱狂的な支持を受けた「JAPAN UNDERGROUND」から5年。13年の歳月をかけた内山英明の「アンダーグラウンド」シリーズ完結編となる本作「㈽」ついに発売。今回は東京大学、東京女子医科大学他の地下動物実験室や地球シミュレーター、スプリング8、LED利用の地下野菜工場、KEK(高エネルギー加速器研究機構)及びつくばBファクトリー、RIビームファクトリーなど超先端科学施設を多数収録しています。

【お知らせ】2005年12月1日 写真家・内山英明氏公式Webサイト「Underground」も公開開始しました!関係者一同入魂の野心作、是非ご覧下さい。毎日そして、アクセス毎に自動更新のコンテンツもございます。今後徐々にコンテンツも充実させてまいります。皆様のご意見・ご感想をお聞かせ下さい。「アンケートに答える」ボタンをクリックして、ご投稿下さい。よろしくお願いします。

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【著者紹介】内山英明(うちやま・ひであき)/写真家

 1949年 静岡県菊川町生まれ。東京総合写真専門学校中退。1976年から85年にかけ、放浪芸人に惹かれて、全国の旅役者や傀儡(くぐつ)師を撮り続ける。1981年 「アサヒグラフ」誌上で初めての連載を開始。作家、音楽家などさまざまな30代アーティストの撮影を3年間手がける。同時にこの年から週刊誌、月刊誌上でドキュメント写真の発表を開始する。

 1985年 《迷宮都市》に惹かれ東京、アジアや欧州を中心に撮影を始める。以後、長期に渡り都市のシュールリアリズム的世界を撮り続ける。1992年 エイズが猛威をふるった年、HIVに冒され、日本で最初にカミングアウトした平田豊の支援活動と撮影を2年間、仲間たちと続ける。

 1993年よりTOKYOの未来空間をライフワークとして取り組み始める。撮影中、偶然に潜った東京の地下世界に強く惹かれ、今日まで日本の都市と地下世界を撮り続ける。著書に 「等身大の青春−俵万智」(深夜叢書、1989年)、 「都市は浮遊する」(講談社、1993年)、 「いつか晴れた海で〜エイズと平田豊の道程」(読売新聞社、1994年)、 「JAPAN UNDERGROUND」(アスペクト、2000年)、 「JAPAN UNDERGROUND㈼」(アスペクト、2003年)、 「東京デーモン」(アスペクト、2005年)
【受賞】
2000年度 第25回伊奈信男賞

<地図にない世界>

 地図に載っていない異形の世界が足下深くに存在するならこの目で確かめてみたい。そんな募る思いがきっかけで地下を潜り始めてもう13年が経つ。最初から暗中模索の中で、日本の地下施設の現状を調べ上げてきたが、いまだその<地図にない世界>と格闘を続けている。なぜ、そんなにまでして地下にこだわったのだろう……。

 幼い頃に遊んだ秘密基地への懐かしさからか、繰り返し読んだヴェルヌ的宇宙世界への憧れからか、調査のおかげで地下世界がSF的イリュージョンをもって浮かび上がってきたせいか、それとも日本の地下施設を視覚的に体系化したいという強い野心からか......。

 そのすべてがきっと動機だったに違いない。そして今、改めて驚きを禁じ得ない。地下世界がこんなにまでもアバンギャルド(前衛的)で革新的な世界であったという事実に。地下は今や文明の中核を成し、未来を暗示し予兆する巨大な装置である。地下から見上げると、地上は地下深くに築かれた広大な“根の国”より、ただひたすら養分を吸い上げて成立している『マトリックス』のような表層的世界に見える。

 地下世界をヒトにたとえるなら“巨大な脳”だ。それは現代文明のもう一つの影の姿でもある。今回、放射線の飛び交う原子力施設や、様々なライフラインを一カ所に束ねて伸びる巨大共同溝、そして今、注目を集めている再生医療の動物実験場や、SF的で近未来的な野菜工場の地下施設を数多く潜ってきたのも、他者の侵入を永い間拒んできた地下世界にこそ新しい時代がストレートに透けて見えるのでは、という思惑があったからだ。

 私は決して忘れないだろう。地下の封印を解いて潜る瞬間の、日常の皮膜の底から立ち昇ってくる詩的で呪術的なあの瞬間を。そこでは時間さえ渇いた川床に水が染み込むように失われていく。そのはるか奥の地底にはケーブルや鉄管がとぐろを巻き、腹わたをひっくり返したように鈍く輝く異世界がある。そんな時は決まって子供の頃、息を呑みながら観た『ミクロの決死圏』の映像が頭をよぎった。体内の宇宙世界を漂流するスリル満点のその映像は、私が潜ってきた倒錯的な地下宇宙を彷彿とさせるに充分な迫力があった。

 私は思い出す。まるで祝祭のあとのようにひっそりと光をまぶしたように輝く鉱山跡を、ダム内部から城砦のようにそびえる空洞のその幾何学的で広大な暗渠を。そんな要塞のような暗い地底より星屑のように光る地上を仰いでいると、地球という惑星に封印されてきた異界の、涯てることのない闇の深さが骨身に染みた。

 地下には決して停滞することのない奔放で澱みのない超然とした空気が常に流れている。様々な構造物の圧倒的な美しさと生命力を目の前にしながら、私は決して色褪せることのない、誰も成し得なかった、新しい時代の物語を紡ぐ気持ちで地下を潜ってきた。地下世界はその神秘に包まれた衣の下で、荒ぶれた時代の狂気を静かに放っていた。これからも人間の欲望が倦むことなく多様化していくかぎり、過去と未来をひとつに融合させながら地下はますます肥大化していくことだろう。

 第3作目もアスペクト編集長、宮崎洋一氏の変わらぬ忍耐のお陰もあって無事(?)撮り下ろすことが出来た。デザイナーは守先正氏、プリンティングディレクターは高柳昇氏といつものメンバーである。個人では撮影が不可能な施設には雑誌『プレジデント』のデスク、桂木栄一氏と『週刊朝日』中村智志氏の協力を仰いだ。最後に現場を影となって案内してくださった施設の方々に深く感謝するしだいです。
              
2005年10月13日 内山英明

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