Snow line of Mt.Fuji / 富士山の雪の境界 [4K]
https://youtu.be/qJEI8EECy7s
ドローンを飛ばす際の重要な情報の一つが「対地高度」である。「対地高度」とは飛行している真下の地面からの高さのこと。例えば、標高700メートルを飛行していても600メートルの山頂の上では「対地高度」100メートルとなる。最近はスマホやタブレットの画面にドローンの高度やスピード、位置情報などを表示させながら操縦することができるのだが、表示されるのは離陸したポイントからの相対的な高度で「対地高度」は表示されない。航空法では、無人航空機は高度150メートル以上の空域を無許可で飛ばしてはならないのだが、その場合の「高度」は離陸地点からの高度ではなく「対地高度」となる。
山の中腹から山頂方向にドローンを飛ばすためには、機体を上昇させながら飛行しないと山の斜面に激突してしまう。対して、山の麓方向に飛ばす場合は、画面に表示される高度は変化がなくても対地高度はどんどん上昇してしまう。
つまり、画面には表示されない「対地高度」を計算しながら飛ばす必要があるのだ。
Fractal Snow Pattern in Mt.Fuji / 絶景 幾何学模様を纏った富士 [4K]
https://youtu.be/218-7QbtFaE
自分のいる場所とドローンの水平方向の距離は画面に表示されているので、三角関数のtan(タンジェント)を使いその高さを求める。ちなみに三角関数を計算するためには関数電卓が必須だが、iPhoneの標準の電卓アプリを横向きに回転させると関数が使えるようになる。富士山の平均斜度は約30度。tan30°は約0.57。これは山頂方向にまっすぐ突き進んだ場合、100メートル進んで57メートル上昇する程度の傾斜があるということになる。ドローンがその地点の上空にいる場合、最低でも57メートル以上で飛行しなければ斜面に激突してしまう。またタブレットの画面に表示されている計器が高度150メートル以上であっても、実際の対地高度はその数値から57メートル引いたものとなるため、計算上207メートルの数値まで上昇してもよいことになる。
先に紹介した動画の後半は、富士山頂と宝永山を正面に捉えつつ、機体の高度を下げながら後進で撮影をし、対地高度が150メートル以上にならないように計算しながら操縦している。
結構忙しいのである。
●ドローンぐらし
#4 ドローンを飛ばすため、アイゼンを購入した
#3 ドローンで撮影した、富士山と日の出
#2 ドローンで撮影した、客船にっぽん丸と帆船日本丸
#1 ドローンを飛ばすため、小型船舶免許を取得した
●渡辺 秋男(わたなべ あきお)
(有)クレセントエルデザイン代表/ドローンジャーナリスト
1976年、東京都生まれ。かつてヘリコプターのエンジニアだった父を持つ。日本機械学会の100周年にちなんだ『100ジュールロボットコンテスト』において、ヘリコプターをモチーフにした作品を出品し創造賞を受賞。現在はシステム開発やウェブ制作の会社を経営し、ドローンによる空撮サービスも行う。空撮映像はフランス国営テレビやNHKをはじめ世界から評価を得ている。現在日本無人航空機産業振興協議会(JUIDA)認定 安全運行管理者の資格取得中。ドローンによる空撮映像サイトを運営。 http://ldesign.asia/