ビジネス : 第15回(最終回) 競合は脅威でもあるが、強みにもなる

第15回(最終回) 競合は脅威でもあるが、強みにもなる

第15回(最終回) 競合は脅威でもあるが、強みにもなる

 『アルマゲドン』は日本だけでなく世界中で大ヒットを記録しましたが、当時よく比較されるパニック映画がありました。『ディープ・インパクト』(全米、日本とも1998年公開)です。
 『アルマゲドン』同様に、地球に巨大な彗星が衝突する危機から人類を救うという設定でした。しかも『ディープ・インパクト』は、あのスティーブン・スピルバーグが製作総指揮ということで、公開前から大きな話題となっていました。そして、公開後、やはり大ヒットとなったのです。
 ある映画評論家の方は次のように言いました。
 「同じような設定なので、『ディープ・インパクト』を観た人たちは、もう『アルマゲドン』を観ないのではないか」と。もちろん、その方だけでなく、そういう意見を述べる方は多かったですね。僕がSWOT分析をするときに、Threats(脅威)の項目に、競合する同時期に公開される作品を取り上げます。まして、この『アルマゲドン』と『ディープ・インパクト』は、公開時期が近いだけでなくストーリーの設定が非常によく似ていましたから、これはThreats以外の何物でもありません。
 結果から申し上げれば、『アルマゲドン』は大ヒットした『ディープ・インパクト』を超える興行収入を記録することができました。それはなぜかと言えば、『アルマゲドン』の楽しみ方は、『ディープ・インパクト』とはまったく違っていたのだと思います。また同時に、僕がそのときに考えたことは次のようなことです。
 競合や競争は、決して脅威ではなく、Strengh(強み)にもなる。
 競合や競争があることで、自分たちの商品をより良いものにしようと切磋琢磨するものです。「あれは競争相手じゃないよ」と思うのではなく、むしろ競争相手をたくさん持っているべきです。映画の競合は、映画だけじゃなくて、たとえばゲームだったり、旅行や健康、美容にかける時間だったりもするわけです。そのような競合から、ヒントを得ることでアイデアは広がるし、ビジネスとしても大きな展開ができるようになる。
 これは、そのあとに携わった作品に関しても、強く思っていたことですし、映画に限らず広くビジネス全般に言えるのではないか、と思っています。


本連載の記事はすべて小社刊『ヒットを生み出すインスピレーションの力学、共感という魔法 ――東映、ディズニー、東宝東和で学んだ仕事のヒント』に収録されています。



鈴木英夫(すずきひでお)
1962年、神奈川県横浜市生まれ。1985年、東海大学文学部広報学科卒業。同年4月、東宝東和株式会社入社。1996年2月、ブエナ・ビスタ・ジャパン株式会社(現ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社)入社。2000年4月、エグゼクティブ・ディレクター/宣伝本部長に就任。2005年11月、日本代表に就任。2010年3月、退任。2010年6月、東映株式会社入社、執行役員 国際営業部長。2014年6月、執行役員 映画宣伝部長。その他、2012年7月〜現在、経済産業省 留学検討委員会(平成25年度より国際人材育成委員会)委員。2013年1〜5月、NHK経営委員会NHK『外国人向けテレビ国際放送』の強化に関する諮問委員。